同業者が多いのに、少子高齢化でお客さんが減る一方だから、売上が伸びないんです!
D社は、とある地方で、地域の特産品の製造小売業を営んでいます。
その製品の品質の高さから、固定客の愛顧を受けていますが、競合との価格競争や少子高齢化による顧客の減少から、このままでは経営は安泰とは言い切れません。
D社の固定客は、会社が立地するD市の人びとです。
D市の特産品は、住民による消費量もさることながら、その特産品が日本全国で知名度の高いことから、D市の住民が季節ごとに地方の知人や親せきに発送する贈答品としての需要も多い製品です。
しかしながら昨今では、日本全国の傾向と同様に、少子高齢化による人口減少のため、固定客は減少する一方です。
また、昨今では人々の意識も変化して、季節の贈答品を送る習慣も廃れていく傾向にあり、売上の減少に拍車がかかっています。
売上の向上のためには、固定客ばかりに頼らず新規の顧客も開拓して、客数を増やす
D社長が困っている「お客さんの減少」の対策を考える前に、そもそも顧客とは何かについて、紐解いてみます。
まず、顧客数を因数分解してみます。
「顧客数 = 固定客 + 新規顧客」となります。
そして売上は、この「顧客数」と、「客単価」との掛け算の結果です。
売上=客数x客単価、客数=新規顧客+既存顧客ー流失顧客(中略)顧客数を増やすためには、「新規顧客を開拓」し、「既存顧客の来店頻度を増や」し、「顧客の流失を防ぐこと」が求められます。(中小機構「事例7回目 既存顧客をアップする」)
「固定客」が減少してしまえば、他の別の要素を増やさない限り「顧客数」が減り、結果として「売上」も減ってしまうことになります。
新規の顧客の開拓のためには、ECを活用する①:国内マーケット
D社製品の需要は、地元住民の消費の他、地元住民から全国の各地へ向けての贈答品、という需要も少なくありません。
D社製品が届いた家庭の、「次は自分で買って楽しみたい」という要望を、従来は電話やFAXによる注文を受け付けてきました。また最近では、「インターネットで注文はできないのか」という問合せが増えてきています。
インターネット通販の市場は、伸びているのでしょうか?
日本国内のEC(電子商取引・インターネット通販)市場(令和2年)は、コロナ禍の影響で観光などの「サービス分野」が落ち込んで、全体としては足踏みであった一方で、「物販分野」では前年比21.7%増と大きく市場規模を伸ばしました。
行政による、EC化の支援が充実しています。
- 「小規模事業者等がポストコロナ社会に対応したビジネスモデルの転換に資する取組や感染防止対策費の一部を支援 補助対象:対人接触機会の減少を目的としたテイクアウト・デリバリーサービス導入、ECサイト構築など」(中小機構「持続化補助金」)
- 「全国の中小企業・小規模事業者のさまざまな経営課題を解決する一助として、デジタル化・IT活用の専門的なサポートを充実させるため、フリーランスや兼業・副業人材等を含めたIT専門家を(中略)選定し、その活動を支援する取り組みです。」(中小機構「中小企業デジタル化応援隊事業」)
- 「中小企業・小規模事業者のためのECサービス・ツールを紹介します」(中小機構「ECサービス紹介一覧」)
たとえ「固定客」が減少してしまっても、「 顧客数 = 固定客 + 新規顧客」 ですから、「新規顧客」を増やすことができれば、「売上」を維持することが可能になります。
新規の顧客の開拓のためには、ECを活用する②:海外マーケット
海外の、特に富裕層で、日本の製品の需要が高まっているようです。
- 「日本食はブーム(中略)世界各国で「食」の人気が一番高いのは日本食という結果が出ています。さらに、アジアなど世界の経済成長に伴う消費市場の拡大、新興国を中心とした富裕層の増加などにより、世界の食市場は、今後倍増すると見込まれ、輸出を拡大していくチャンスと考えられています」
- (農林水産省「ニッポンの”おいしさ”をもっと世界へ」)
- 日本は人口減少に直面し内需が縮小傾向。外需を取り込み経済成長につなげる必要。グローバル競争が激化する中で、他国に真似できない日本固有の魅力を外需の獲得につなげることを目指す。具体的には、日本のコンテンツ、ファッション、日本食、地域産品、観光等で海外展開やインバウンドの強化に取り組む。【評価】日本の生活文化の特色を生かした商品・サービスは、他国に真似できない日本固有の魅力を持ち、外国人が「クール」と評価。(経済産業省「クールジャパン機構について」p.1)
行政による、海外販路の拡大の支援が充実しています。
- 「政府の輸出目標である2025年までに2兆円、2030年に5兆円を達成するため、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を令和2年11月にとりまとめ」(農林水産省「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略の進捗」)
- 「デジタル化の潮流をとらえた中堅・中小企業の海外展開が自律的に拡大する仕組みの構築を目的として、中堅・中小企業の海外への輸出を支援する民間事業者による新たなビジネスモデルを構築するための実証的な取組に対する支援を実施します。」(日本貿易新興機構(ジェトロ)「令和3年度 中堅・中小企業輸出ビジネスモデル調査・実証事業費補助金」)
- 「中小企業庁では優れたコンセプトや魅力的な地域資源を保有しているものの輸出販路が弱く十分に海外需要を取り込めていない中小企業者等が(中略)越境EC(電子商取引)を積極的に取り入れたブランディング、プロモーション等の取り組みを行う場合に、その経費の一部を補助する」(中小企業庁「令和3年度補正予算 デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業費補助金」)
古くからの「固定客」が減少してしまっても、「 顧客数 = 固定客 + 新規顧客」 の「新規顧客」を増やすことができれば、「売上」を維持することが可能です。
そして、「新規顧客」は国内だけに拘る必要がない時代になってきているのかも知れません。
食品を海外に販売する場合、注意が必要なケースがあります。
「2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により、日本の食品に対し放射性物質に係る規制を実施している国・地域があります。」(農林水産省 お問合せ先:輸出・国際局 輸出支援課 輸出相談窓口 ダイヤルイン:03-6744-7185)
今回は以上です。