売上の向上には成功事例の情報共有が必要だった飲食店A社

困っている社長

コロナ禍で経営はたいへんですが、各店の責任者の個性や独自性を、尊重してあげたいんです!

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複数店舗の飲食店を経営しているA社長から「コロナ禍で落ち込んだ売上を回復する対策を考えて!」と相談を受けて、3年分の決算書と経営資料を拝見したところ、A社の課題はコロナ禍ばかりでありませんでした。

目次

売上の向上のためには、店舗間で成功事例の情報共有が必要

A社長は長らく店に貢献してくれたベテラン・スタッフを大事にして、新しい店を出店するごとに店の責任者に抜擢してきました。

ある店の責任者はホールスタッフ出身で接客サービスが抜群に上手、別の店の責任者は調理場出身で新メニューの開発が得意、など個性が豊かな責任者たちです。

A社長は、店名やグランドメニューなど一定の共通点を守りさえすれば、各店に常駐する責任者の独自性に任せて、店の運営に大きな裁量を与えてきました。

その結果、開店時刻こそ共通であるものの、ランチタイムの終了時間、ディナータイムまでの休憩時間の有無、閉店時間などが、店ごとに異なってしまっています。

コンサルタント

店ごとの運営に、大きな裁量を与えてしまったことが、赤字の原因だったのでしょうか?

まず、店ごとに異なる運営を行う良し悪しを判断するために、各店の立地の特性を調査することにしました。調査に使用したのは無料で利用できる「jSTAT」です。

jSTAT

「地図で見る統計(jSTAT MAP)は、誰でも使える地理情報システムです。統計地図を作成する他に、利用者のニーズに沿った地域分析が可能となるようなさまざまな機能を提供しています。防災、施設整備、市場分析等、各種の詳細な計画立案に資する基本的な分析が簡単にできます。」

*出典:e-STAT・日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイト

地理情報システムを使った調査とベテラン・スタッフからのヒアリングの結果、A社の複数ある店舗は、立地の人口構成に大きな差があることが判りました。

いずれも駅前の好立地ながら、ある店は住宅地に立地して人口は多いのですが、昼間は仕事に出ている人ばかりなのか、主婦層が中心となるランチタイムのお客さんは少なく、その代わりに週末のランチタイムはファミリー客で多いに賑わうという傾向がありました。

一方でオフィス街に立地する他の店では、住民としての人口は少ないのですが、平日は日中から夜の終電直前まで、ランチタイム後の休憩時間も設けられないほどの多くのお客さんで繁盛していました。その代わりに、住宅地の店とは逆で、週末の店は閑散とします。

コンサルタント

店ごとの営業時間の違いは、各責任者の合理的な判断の結果でした。

次に、A社各店のレジから出した時間帯別・曜日別の売上記録をもとに「ABC分析」を行ったところ、ある特徴が判明しました。

ABC分析

「販売金額あるいは販売数量の多い順に累計し、その比率から商品群をA、B、Cのランクに分類します。重点商品、重点仕入先等を発見します。」

*出典:中小機構「小規模事業者支援のための業務必携 改訂版・第10章 小売業・販売分析 p.97」

ある店でAランクの、しかも利益率の高いメニューが、別の店では人気が低いどころか、メニューに掲載すらされていませんでした。また、ある店でAランクだったドリンクの人気企画(希少酒の日替わり提供)は、別の店では企画が採用されていません。

メニューに関する店ごとの違いについて、その理由を各店の責任者にヒアリングしたところ、それは営業時間のように立地による顧客層の違いを意識したものではありませんでした。

コンサルタント

伺ってみると「 メニューに関する店ごとの違い 」は、店の責任者同士のプライドや、競争意識が理由であることが判りました。

そもそも各店の責任者は、自分の店にはなく他店で採用されているメニューがAランク、つまり売上に大きく貢献しているメニューであること自体も知りませんでした。

何故なら、A社にはそのような情報を共有するシステムも、そして 情報を共有する企業風土もなかったのです。そのため、せっかくの成功事例も、それぞれのお店に閉じてしまい、けっしてA社全体に効果を及ぼすことがありません。

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そこでA社長は各店の責任者に、厳しい経営状況を説明して、業績改善のために、他店で開発された人気メニューでも採用してほしい、と説得することにします。

また同時に社長は、Aランクメニュー等の各店舗間の情報共有のための、定例ミーティングも始めることにしました。

従業員間の競争心を尊重して士気向上を図ることも大切ですが、それは売上と利益を上げて会社が継続していける、という大前提が必要なのです。

まとめ:売上の向上に必要な情報共有のポイント

  • 成功事例を共有して、個店の「強み」を企業全体の「強み」へ昇華させる

今回は以上です。

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