競合店に奪われたお客さんを取り戻そうと、宅配チラシやホームページやSNSにまで力を入れているのに、集客効果が上がらないんです!
複数店舗の食品スーパーを営むC社長のお悩みにお答えしようと、3年分の決算書や経営資料を拝見、店舗のベテラン・スタッフにヒアリングもしたところ、C社の課題は競合店の影響ばかりではないようです。
C社の店舗は、それぞれ条件の異なる立地にありました。
最寄の駅からの利便性、駐車場の台数、商圏の人口・年齢構成比、そして何より重要な、それぞれの商圏内の競合店の有無やその業態・特徴が、店舗ごとに異なっていたのです。
そのような状況のもと、C社では業務の効率化と経費の削減を目的に、店舗ごとに目玉商品を決めて店舗ごとにデザインしていたチラシをやめて、全店舗で同じ内容の「共通チラシ」の運用を始めていました。
しかしながら、C社店舗が得意としていた当日の朝に水揚げされたばかり新鮮な魚介類や、生産者の顔が見える安心・安全な精肉や・青果は、複数店舗で販売するのに十分な量を、本部で一括して毎日確保することは困難でした。
自慢の生鮮品の仕入は、各店舗の仕入の目利きに任せるという運用が継続しているのです。
そのため、C社の「共通チラシ」で大きく訴求されるのは、大手メーカーが大量生産を行うNB(ナショナル・ブランド)商品が主となってしまいました。
C社が増やしたいのは、どのようなお客さんなのでしょう?
C社の店舗の中には、商圏内に新興住宅地が開発されて人口が増えている店もありました。
まだ幼い子どもを抱えた若いファミリー層が新しい住民の中心で、食品スーパーの需要は高いと期待されたのですが、売上は予想通りには上がっていきません。
調査してみると、新たに越してきた若いファミリー層は、子どもに安心・安全な食品を食べさせたいという意向を強く持っていました。
若いファミリー層は、C社店舗の品揃えと親和性が高そうなのですが、売上への貢献が期待通りではありません。地域で長い歴史のある店舗の古びた外観や施設が、避けられている原因なのでしょうか?
調査では、若いファミリー層が新聞を購読しない傾向が強いことも判りました。
ニュースなどの情報は、インターネットで入手すれば十分と考えているのです。
そのため、新聞の折り込みで宅配していたC社店舗のチラシが若いファミリー層に届くことはなく、せっかく増加している新しい顧客層への告知が不十分であったことが判明しました。
さらに、若いファミリー層の家庭では新聞を取っていたとしても、共働きや育児で多忙なためか、折込チラシまで細かくチェックしていないケースも多い、という傾向も判りました。
集客には①:ターゲット顧客に合わせた「情報」が重要
C社のある店舗の商圏内では、若いファミリー層が増えています。この顧客層は、子どもに安心・安全な食品を食べさせたいという意向を強く持っており、 C社店舗の品揃えと親和性が高そうなことが判っていました。
C社では、店舗の情報を提供するホームページとSNSのアカウントを作って、すでに運用を開始しています。
しかしながら、ホームページとSNSでも、「共通チラシ」と同様に、 業務の効率化と経費の削減を目的に、本部が一括して、その管理・運営を行っています。
そのため、ホームページでも「共通チラシ」と同じく、全店統一のNB商品が中心の商品情報に留まり、各店の強みである「新鮮で安心な生鮮品」の訴求が、不十分だったのです。
集客には②:ターゲット顧客に合わせた、情報の「提供方法」が重要
C社のある店舗の商圏内では、若いファミリー層が増えています。
この顧客層は、 新聞の折り込みチラシが届くことはない、もしくは、多忙のためにじっくりチラシを見る時間を取ることができません。
一方でニュースなどの情報を、インターネットで入手していることが判っています。
C社では、本部一括で管理しているSNSアカウントから、店名は異なるものの内容は同一の、NB商品が中心の投稿が、店舗数のぶん何通も重複して届いてしまうような運用でした。
その結果、最寄りの店舗の情報を得たいと考えてせっかくSNS登録してくれた顧客に、各店舗ごとの自慢の生鮮品などの商品情報が提供できていません。
そればかりか、 「同一の投稿が店舗数のぶん何通も重複して届いてしまう」煩わしさから、すぐに登録を解除されてしまうような有り様でした。
集客の効果をあげる対策①:店舗ごとのSNSアカウントを作成して運用する
C社では、「経営の効率化」を理由に本部で一括管理・運営していたSNSのアカウントを、各店ごとに作成して運営する体制に改めました。
この改善によって、各店の目利きの担当者が仕入れた、各店の「自慢の生鮮品」情報を、顧客に提供できるメリットが生まれます。
SNSに登録してもらったお客さん以外の、新規顧客の開拓についても考慮しました。
具体的には、C社店舗の登録者向けのSNSとしては、SNSの中でもFacebookやInstagramよりも幅広い年齢層に使われているLINEを活用します。
一方で、新規顧客の開拓用に、他のSNSよりも情報の拡散性が高いことに定評があるTwitterを併用して、未登録者に向けた情報発信を行うことにしました。
各店舗では、新たに立ち上げたSNSの登録者を増やすため、店ごとに検討を行った値引きや特典景品によって、定期的な登録促進キャンペーンを行う計画です。
集客の効果をあげる対策②:SNSの担当者向けに研修をおこなう
従来は本部一括で運営していたSNSです。その内容はお世辞にも効果的ではなかったものの、一方で各店の手間は省けていました。しかし、運営体制の変更後は、店ごとに運営を、しかも効果的に行う必要があります。
各店で指名されたSNSの担当は、プライベートでも活用して慣れ親しんでいた者がいれば、見るだけの者もいれば、まったく避けていた者さえいました。
各店の担当者によって、SNSのリテラシー(知識や活用能力)のレベルが異なっていたのです。
そこでC社の本部の主導で、効果的な投稿がどのようなものか、また各店舗ご自慢の生鮮品を美味しそうに撮影するテクニックについて、研修を行うことにしました。
小学生がわかるぐらいの言葉で(中略)3行より長い文は二つ以上に分けましょう(中略)単に「限定スイーツ」とするよりも、「一日10個限定のシュークリーム」と数字を入れて具体的に表現するとよいでしょう(中略)話しかけるように書き、自分が何者かを親しみやすく伝えましょう(中略)準備風景などの投稿もおすすめです(中略)イベントやキャンペーンの告知の場合、その内容を具体的に表現してください。(日本政策金融公庫『誰でもらくらくSNS活用ガイドブック』p.16)
美味しそうな料理写真を撮るためにライトで光を当てようと思います。撮影用のスマホが図(p.8)の位置のとき最も適切な光の方向は次の4つのうち、どれでしょうか?「①逆光」「②半逆光(後方斜め45°)」「③サイド光」「④順光」(中略)この部分こそがプロとアマチュアの最も大きな違いであり、勘違いしている方が多い部分なのです(日本政策金融公庫『売上アップにつながる写真の撮り方ガイド/スマホで簡単!』p.8)
研修の結果、ある店舗の担当者は、午前中には早朝に水揚げされて売場に届いたばかりの鮮魚、午後には夕食の献立用に精肉や青果、そして夕方には帰宅者向けに惣菜や弁当を、見映えのよい画像付きで、毎日3回、SNSで投稿することにしました。
また、SNS投稿文には品名・価格に加えて、担当者が試食をする機会を設けた上で、生鮮品の新鮮さやおいしさの感想コメントを追加して、いっそう効果を上げました。
まとめ:集客のためのSNS活用の2つのポイント
- 各店舗ごとの特長を、伝えるべき顧客に伝えるための、各店舗ごとのSNSアカウントの作成および運用
- SNS運用のリテラシー(知識・活用能力)向上のための、「投稿文の書き方」と「写真の撮り方」の研修
今回は以上です。