当社製品の品質は、取引先から高く評価されているのに、売上が伸びないんです!
製造業を経営しているB社長から相談を受けて、3年分の決算書と経営資料を拝見して、ベテラン・スタッフから業務プロセスについても伺ったところ、B社で解決すべき課題が判りました。
利益の改善のためには、正しい原価を把握して、価格の設定をおこなう
B社は、BtoBでメーカー向けに、特殊なパーツを生産・販売しています。
製品はすべて、取引先ごとのオーダーメイドで、典型的な多品種・少量生産です。そのためか、B社に製品の価格表は存在していません。
B社では、本来であれば受注の度に、毎回異なる仕様の特注製品の、使用する原料の費用に、加工の手間暇や難易度に応じた人件費や光熱費や設備費を加えて、原価を計算する必要がありました。
そして原価を踏まえて、B社の利益を見込んで、取引価格を決定する、という手順を踏む必要があったのです。
B社は、製品ごとの原材料費は把握できていました。一方で、加工の手間暇や難易度に応じて異なる従業員の作業時間を、記録してはいませんでした。
B社では、原材料費以外に、製品ごとの原価を見積もるための根拠を記録してはいません。そのため、製品ごとの正しい原価がわからず、正しい原価に適切な利益を上乗せして決定する筈の価格も算定することができませんでした。
よって営業マンは、取引先の言い値や、以前に販売したことのある類似の製品と同じ価格で、取引価格を決めざるを得なかったのです。
製造業の分野は、年々技術が進歩して、原材料が高品質になって高価格化し、加えてそれらを加工する機械も精密化・高額化して、製造に関わる費用が増加する傾向もあります。
そのような状況下、取引先の言い値や古い製品のままの価格で取引をしていては、売上が伸びないどころか利益が残らず、一生懸命につくった製品を赤字で売ってしまうことにもなりかねません。
まず、原価を把握するところから、始めることにましょう。
原価が設定できたら、次に行う作業は、「利益の見積もり」です。
B社長は、製造業全般の売上高営業利益率を参考にして、B社製品でも5%の営業利益が出るように価格設定を見直すことにしました。
そしてB社長は全従業員を集めて、今後の方針として説明の上、営業マンと一緒に取引先を回って価格設定の見直しが必要であることを自ら説明する計画であることも宣言しました。
価格設定の見直しは、売上に責任を持つ営業マンにとって、取引先に切り出しにくい商談です。「値引きしないなら、他社に発注しようかな」とでも言われたら、交渉に応じてしまう心情も十分に理解できます。
一方で、B社の場合は、従来の価格設定が「どんぶり勘定」の安値であった状態でした。
これからも「どんぶり勘定」を続けていれば経営危機に陥る可能性もあるため、「取引先の要望に応えて、高品質の製品を作って納め続けるには、企業の存続に必要な利益を得るための、価格設定の見直しが必要」と経営者自身が取引先にしっかりと伝えて、理解してもらう必要がありました。
まとめ:利益の改善に必要な3つのステップ
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今回は以上です。