利益の改善にはLコスト(人件費)率の改善が必要だった飲食店A社

困っている社長

コロナ禍でお客さんは減っていますが、従業員の生活を考えると、辞めてもらったりシフトを減らしたりが、できないんです!

スタッフが仲良くしている画像

複数店舗の飲食店を経営しているA社長から、「コロナ禍で落ち込んだ売上を回復する対策を考えて!」と相談を受けて、3年分の決算書と経営資料を拝見したところ、A社の課題はコロナ禍ばかりではなかったようです。

目次

利益の改善には①:Lコスト(人件費)率を意識する

L率とは、飲食店の売上高に占める人件費の比率で、平均30%と言われています。ところがA社では、その指標を大幅に超える状況が続いていました。

事情を伺うと、時間帯や曜日、季節によって店舗の繁忙には大きな差があるのに、しかもコロナ禍でお客さんが激減してしまっているのに、A社では従業員の人数やシフトを変えてはいなかったのです。

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A社長はなぜ、L率を抑えようとしなかったのでしょう?

利益の改善には②:Lコスト(人件費)率は30%をオーバーしない

A社長は長らく店を構えた土地で、お客さんはもちろんのこと、従業員のことも大切にしています。

近隣の競合店、チェーン店やコンビニも働き場所として選択肢がある中で、A社を選んでくれた従業員に感謝して接していました。

従業員の誕生日にはサプライズ・パーティを企画したり、試験前の学生バイトには店の一角を勉強のために開放したりもしていました。

A社長の人間性が伺えるそのような効果か、従業員が転居や卒業などの事情で辞めざるを得ないときには、後任として知り合いを紹介してくれることが珍しくなくなっていました。

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A社では、従業員が不足して困ることがなく、求人に広告費用を費やす必要がない、というメリットもありそうです。

そんな「従業員想い」のA社長は、従業員の生活を心配して、「辞めてもらったりシフトを減らしたり」という思い切った決断ができなかったそうです。

しかし、その結果、お客さんの減った店内で従業員たちが手持無沙汰にヒマをもて余す、という事態が続きます。

そして、A社は飲食店で目標とすべき「L率30%」を大幅に超えてしまう毎日が続いていました。

利益の改善には③:顧客ニーズに応える新サービスで売上を向上させて、Lコスト(人件費)率を30%におさえる

A社は、従業員の生活を心配して、従業員の人数もシフトも減らす決断ができず、その結果、L率(人件費率)が高くなり、経営的には赤字に陥ってしまいました。

このままコロナ禍の売上の大幅減が続けば、最悪の事態を招いてしまいそうです。

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どうしたものかと頭を抱えそうになったとき、ヒアリングしたベテラン・スタッフから聞いた言葉から、解決のヒントが浮かびました。

A社の立地する環境でも、日本全体の傾向と変わらず、顧客の高齢化が進行していました。

その影響か、ベテラン・スタッフは、長年の顔馴染みだった何人もの常連さんたちが、最近は店を訪れないことが気になっている、と言うのです。

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地域の世話役も務めるA社長は人脈を駆使して、従業員が名前を挙げた常連さんたちの連絡先を手に入れて、その近況を尋ねることにしました。

すると、かつての常連さんたちの多くは、コロナ禍のため外出して食事をすることを控えたり、心配する家族に外出を止められたりしている、というのです。

また、「高齢のため、そもそも外出することが難しくなった」という理由で、A店からも足が遠のいてしまった常連客も多いことが判りました。

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「出来ることなら、またA店の味を楽しみたい」と言う元常連さんも多かったのです。

そこでA店では、元常連さんたちにまた店の味を楽しんでもらおうと、店内業務に余裕がある従業員たちでメニューを考案して、新たに宅配サービスを始めることにしました。

チラシも手作りして元常連さんたちへ配布して回ったところ、前評判は上々でした。

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元常連さんたちは「顔なじみの従業員が宅配してくれる」のも楽しみにしています。独り暮らし高齢者の「見守りサービス」としても可能性があるかもしれません。

フードの宅配は、今や激戦市場です。安易に手を出しても、大手企業が続々と参入している中で対抗するのはひじょうに難しいのが現実だろうと思われます。

一方で、A社のように古くからの固定客に対象を絞って、しかも経営方針として減らさない従業員が、手すきの時間帯に対応するという人材の活用方法は、「従業員想い」のA社長がL率改善にチャレンジする貴重な一歩です。

まとめ:利益の改善に貢献する3つのポイント

  1. 「従業員想い」の経営方針 ▶ 引き続き、従業員の人数やシフトは減らさないが、人材を有効活用する
  2. 「従業員想い」を「お客さん想い」へ ▶ 顧客の声を聴いて、顧客の望む商品・サービスで対応する
  3.  L率(人件費率)の高さ ▶ 人材を活用して、売上を伸ばすことによって、L率の低減を図る

今回は以上です。

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