本業の倉庫代を削減するために、せっかく育てた新規事業を廃業しないとならないんです!
製造業を経営しているB社長から相談を受けて、3年分の決算書と経営資料を拝見して、ベテラン・スタッフから業務プロセスを伺ったところ、B社の課題が明らかになってきました。
B社の本業は製造業です。
一方で、先代から相続した土地を使って知人の勧めで、まったく畑違いの多角化事業を始めてみたところ、本業と比べて売上は微々たるものでしたが、順調に事業が立ち上がってくれていました。
B社長が多角化した新事業は、運営を専門の管理業者に任せっきりです。
B社の経営の悪化が続いていた原因について、当初は「本業で、種類が増えすぎた製品群と、その在庫でかかる高い倉庫代が原因だ」と考えたB社長でした。
ところが実は、その「種類が増えすぎた」品揃えの豊富さと、「その在庫」によって可能となる短納期こそが、B社の特長、つまりB社の「強み」であると気づいて、逆に倉庫スペースをいっそう拡大する積極策を打ち出そうとします。
そして、そのために多角化事業を廃業して、その跡地を本業の倉庫にあてようと考えました。
B社は、多角化事業を廃業してしまって、良いのでしょうか?
管理会計を導入しなければ、事業別(製品別)の実績管理ができない
B社長の相談を受けて、多角化事業の現地を視察してみたところ、施設の外観こそ古びてきていたものの、事業はなかなか好調のように見受けられて、倉庫にするために廃業するのはもったいないような気がします。
そこで決算書の「損益計算書」で、多角化事業の収益性を確認しようとしました。
しかしながら、決算書ではB社全体の経営数値しか分りません。
B社では、本業の製造業と多角化事業の、それぞれの収益性を分けて見ることができる経営資料が、存在していなかったのです。
そこで、経理スタッフや税理士に確認しながら、手作業でB社の事業別の「損益計算書」を作成してみると、判ってきたことがありました。
事業 | 売上(単位:万円) | 営業利益(単位:万円) |
---|---|---|
B社(全社) | 5、000 | 500 |
内訳①:製造業部門 | 4、000 | 100 |
内訳②:多角化部門 | 800 | 400 |
B社の利益を支えていたのは、売上の小さな多角化事業だったのです。
おそらく従業員の少ない企業では、社長以下の全従業員が日々の多忙な業務に追われて、管理会計に手を広げるのは後回しになるかと思われます。
一方で、経営状況を正確に把握して、自社の課題を可視化して、課題への対応を適切に進めるためには、管理会計はとても重要な取組みであると考えられます。
まとめ:経営の立て直しに必要な3つのステップ
「部門別業績管理を実施していない会社では(中略)、2)どうすれば利益が向上するかが判断できない、3)伸ばす事業と撤退する事業の判断ができないといった問題を抱えることになります」
*出典:中小企業庁『「経営力向上」のヒント~中小企業のための「会計」活用の手引き~P.37』
今回は以上です。