利益の向上のためには価格設定の見直しが必要だった製造小売D社

価格設定のイメージ画像
困っている社長

同業者が多くて、価格競争が激しいから、利益が取れないんです!

D社は、とある地方で、地域の特産品の製造小売業を営んでいます。

その製品の品質の高さから、固定客の愛顧を受けていますが、競合との価格競争や少子高齢化による顧客の減少から、このままでは経営は安泰とは言い切れません。

コンサルタント

D社の周辺には、競合企業が多いようです。

D社製品は、ある地方の特産品であり、同地方にはD社と同種の製品を製造・販売する企業が十数社も存在しているのです。

また昨今では、日本全体の少子高齢化による影響から、原材料の仕入が難しくなってきた傾向があります。原材料の生産者の高齢化や後継者難によって、原材料の供給が減少して、D社の同業者間で取り合いの状況で、仕入れ値も高騰してきています。

そのため、D社の売上は安定的ではあったものの、利益が減少を続け、近年では赤字体質に陥ってしまっています。

コンサルタント

D社長がお悩みの「価格競争」について、D社が立地するD市に赴いて、現地調査を行いました。

現地での調査で、D社は地域の特産品の産地で老舗の部類に数えられる企業であり、そのため特産品の生産に必要な最上級の原材料を入手できるルートを確保できていて、さらに昔ながらの伝統的で手間ひまの掛かる丁寧な製法による最高品質の特産品を製造している、ということが判りました。

また、本題の価格調査では、検討の結果、調査項目を、①原材料の品質、②製品価格、③内容量、④加工の工程数 の4つとしました。

そして、価格調査の結果、D社製品が利益を取れない理由が判明しました。

目次

利益の向のためには、価格を設定する際、顧客への提供価値を考慮する①

D市の競合他社との比較では、特産品が店頭で販売されている「製品価格」ではなく、別の基準とします。

調査項目の「②製品価格」を「③内容量」で割って、「量」単位の「価格」を算出し、この数値を「量単価」と定義しました。

調査の結果、D市特産品の「量単価」が

競合他社の普及品 < D社製品 <  競合他社の最高級品

であることが判りました。

そして、「量単価」について、同業他社となる十数社の製品を比較しました。すると、国内最高級品の産地であるD市において、その中でも最上級と評価されているD社製品が、「量単価」では全体の中位のポジションになってしまっていたのです。

コンサルタント

D社製品の「量単価」が、特産品全体の平均と同レベルとは、品質的には手間ひまのかかる「最高級品」なのに、ずいぶんリーズナブルです。

利益の向のためには、価格を設定する際、顧客への提供価値を考慮する②

次に、D社製品と同じように、最高級の原材料を使用して、加工に昔ながらの手間ひまのかかる製法を用いて作る製品、つまり「最高級品」に絞って、「量単価」の分析を行いました。

「最高級品」の定義は、調査項目の「①原材料の品質」で最高の等級の原材料を使用して、「④加工の工程数」でD社と同等の作業プロセスを経ている製品、とします。

すると、「量単価」の比較において、特産地を代表するD社製品の「最高級品」の「量単価」が、下位のポジションになってしまっていました。

コンサルタント

D社製品の価格は、「最高級品」グループの平均価格よりも低い、という結果でした。

愛顧してもらっている顧客に、自社の赤字のしわ寄せとして、安直に高い価格を押し付けることは受け入れらません。長い年月をかけて築いた信頼関係を失い、顧客からそっぽを向かれてしまうことでしょう。

一方で、D社のように、堅実に特産品の伝統を受け継ぎ、最高級の原材料をつかって、熟練の職人が丁寧に製造を行っている企業が、適正利益を得られなければ、やがて企業として存続できなくなります。それは、D社製品を愛顧している顧客にとっても、取り返しのつかない損失となるかもしれません。

まとめ:利益の向上のために必要な「価格設定」の4つのポイント

  • 企業の存続に必要とされる、適正な利益を確保するために
  • 原材料の品質、熟練の技術、加工の手間ひま等で実現する、顧客への提供価値を踏まえて
  • パッケージング(内容量)の異なる製品価格ではなく、量単価(製品価格÷内容量)を基準にして
  • 自社製品の価格設定を行う
コンサルタント

試算したところ、仮に「最高級品」の平均値にD社製品の「量単価」を設定すれば、D社の営業利益は黒字になる、という結果でした。

今回は以上です。

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