商圏内の競合が手ごわいので、対抗策を打ち出すのが大変なんです!
複数店舗の食品スーパーを営むC社長のお悩みにお答えしようと、3年分の決算書や経営資料を拝見、店舗のベテラン・スタッフにヒアリングもしたところ、C社の課題は競合店の影響ばかりではないようです。
C社のある店舗の競合店は、C社と同じ食品専門のスーパーマーケットながら、セントラル・キッチンを構えて効率的に調理した惣菜やカットした生鮮品を、C社店舗よりも低価格で提供できる点に特長がありました。
また、NB(ナショナル・ブランド)商品でも、店舗数の多い競合店の方が、調達力を活用してC社店舗よりも低価格で提供しています。
厳しい競合環境のもとでは、長年にわたって地域の固定客に親しまれてきたC社店舗とは言え、昔ながらの堅実な経営だけでは太刀打ちが難しそうです。
どうしたものか?と頭を抱えそうになったとき、ベテラン・スタッフの言葉を思い出しました。
C社のある店舗の責任者は、もともとC社全体の精肉部門の仕入れ担当を務めていた経験から、仕入れの目が利き、店舗の精肉の品質はすばらしいとお客さんからたいへん好評なのだそうです。
買い物を済ませたお客さんが「美味しいC店のお肉を食べたら、いくら値段が安くても他店のは買えない」などと口々に褒めてくださるのだと、レジ担当のスタッフが自慢気に話してくれました。
また、C社の他の店舗では、海に近い立地を活かして、地元の漁港にあがった鮮魚が当日の開店と同時に売場に並ぶや、午前中に売り切れてしまうということでした。青果も同様に人気で、地元の新鮮な野菜や果物は、生産者の名前や顔写真付きのPOPを付けて売場に並べられています。
美味しくて人気の商品を揃えているC店の売上が、なぜ落ち続けているのでしょう?
利益の向上のためには①:ポジショニングの明確化
ベテラン・スタッフの話をヒントに、競合店も視察の上、店の特徴の違いを分析してみます。
調査の項目は、①品揃え、②品質、③価格、④接客 の4項目で行いました。
調査の結果、競合店の特徴は、①食品専門の品揃え、②やや低い品質(セントラル・キッチンで調理やカットされた食品の鮮度)、③低価格、④ビジネスライクな接客 でした。
一方で、C社店舗の特徴は、①食品専門の品揃え、②高い品質(「獲りたて」「切りたて」の鮮度・生産者の顔が見える安心感)、③標準価格~やや低価格、④フレンドリーな接客 です。
幾つかのパターンを試した結果、競合店とC社店舗の特徴を、「価格」と「品質」のグラフで表してみることにしました。
縦軸には、お客さんにとっての一つ目のベネフィット(利便性・満足感)と考えられる「②品質(新鮮さ・安心感)」を、横軸には、二つ目のベネフィットの「③価格」を取りました。
すると、C社店舗と競合店とで、特徴が似通った部分も見られます。言葉を換えれば、ポジショニングが明確化されていませんでした。
利益の向上のためには②:「儲からないポジション」の回避
一般的に、品質と価格は比例します。低品質の商品は低価格で提供が可能ですが、高品質の商品は高い価格になるものです。
競合店は、鮮度よりも効率と経済性を重視して、セントラル・キッチンを構えた生産方式の採用によって、商品を低価格で提供しています。
C社店舗の生鮮品は、競合店より高品質なので高価格になる筈のところ、本部で決めた競合店対策で、やや低価格での販売を迫られていました。
低品質なのに値段の高い品は、お客さんから見向きもされません。
一方で、高品質にもかかわらず安い品は、お客さんには喜ばれるものの、企業側の経営が難しくなります。
C社店舗は、競合店が出店して以降、まさにその難しいバランスの両立を、自らに強いてしまっていたのです。
競合店を意識して、高品質な生鮮品を安売りして、売上も利益も減らしてしまっていました。
まとめ:利益の向上に必要な3つのポイント
- 自社の「強み」=顧客から評価されている提供価値、を理解する
- 自社と競合の特徴を踏まえて、競合が「強み」とするセグメントで勝負しないように、自社のポジショニングを決める
自社のポジショニングを明確にして、それを顧客にしっかりと伝えましょう。
- 提供する商品の価値を、顧客にしっかりと伝え、提供価値に相応しい価格の設定を行い、適正な利益を確保する
今回は以上です。