同業者が多すぎて、差別化が難しいので、売上も利益も伸びないんです!
D社は、とある地方で、地域の特産品の製造小売業を営んでいます。
D社長から「売上も利益も伸び悩んでいるので、製品を差別化して、業績を上げる対策を考えてほしい」と相談を受けて、3年分の決算書と経営資料を拝見、ベテラン・スタッフからヒアリングも行ったところ、D社の課題は「差別化」ではなかったようです。
まず、D社長がお悩みの「差別化」について、D社が立地するD市に赴いて、現地で調査を行いました。
D社は、地域の特産品の産地で、老舗の部類に数えられる企業です。そのため、特産品の生産に必要な最上級の原材料を入手できるルートを確保できています。
さらに、昔ながらの伝統的な、手間ひまの掛かる丁寧な製法で、最高品質の特産品を製造していました。
また、D市が特産品の新興のために展示会や販売イベントを行う際は、地域の数多くの同業者の中から、D社製品がつねに選ばれています。
D社の「差別化」は、すでに十分な様子です。
念のために、D社の「差別化」について、顧客の声も聴いて確認します。とは言え、D社の小売店舗を訪れるお客さんにアンケートを行ったとしても、もともとD社をひいきにしている固定客のポジティブな回答しか集まらない可能性が高いでしょう。
そこで「差別化」の調査・分析の手法として、インターネット上のホームページやSNS上で、D社製品やD社に関連する情報や投稿を収集して、テキスト・マイニングを行うことにしました。
「KH Coderとは、テキスト型(文章型)データを統計的に分析するためのフリーソフトウェアです。アンケートの自由記述・インタビュー記録・新聞記事など、さまざまな社会調査データを分析するために制作しました。「計量テキスト分析」または「テキストマイニング」と呼ばれる方法に対応。」(「KH Coder」トップページ)
インターネット上に存在した、D社に関わる評価コメントをテキスト・マイニングした結果、D社製品の品質に対する賞賛の声が数多いことが判りました。
その理由は、原材料の品質、加工の技術、食感や美味しさ、そして小売店舗での接客サービスなど、多岐に渡っていました。D社およびD社製品の様々な特長が、高く評価されています。
さらに、同様の調査を競合企業についても行いました。結果をD社と比較したところ、D社の方が高い評価を得ていることが確認できました。やはり、D社およびD社製品は、すでに十分に「差別化」されていると考えて問題はさなそうです。
それでは、D社の売上と利益が伸びないのは、何故なのでしょう?
経営の立て直しに必要な「売上の方程式」
D社は、特産品の製造小売業を営み、その製品の品質の高さから、固定客の愛顧を受けて、安定的な経営を続けてきました。
一方で、D社製品はある地方の特産品であり、同地方にはD社と同種製品を製造・販売する企業が十数社も存在しています。
つまり、競合が多いのです。
また昨今では、日本全体の少子高齢化による影響から、原材料の仕入が難しくなってきた傾向があります。
原材料の生産者の高齢化や後継者難によって、原材料の供給が減少して、D社の同業者間で取り合い、仕入れ値も高騰してきています。
そのため、D社の売上は安定的ではあったものの、利益が減少を続け、近年では赤字体質に陥ってしまいました。
D社は売上と利益を伸ばすために、どのような手を打てば良いでしょう。
今後の売上拡大の期待としては、オンライン販売が考えられます。
D社の製品を贈答品として送られた地方のお客さんから、「今後は自分たちでも購入したい」という要望が届くと、これまでは電話やFAXで注文を受け付けてきました。それが最近では、インターネットで注文できないかという問合せが増えてきたところです。
ところが当社は、インターネットやITに詳しい人材など、皆無です。
行政を始めとした様々な支援体制もあるので、おいおい考えましょう。
そもそも売上を伸ばすためには、売上の方程式を踏まえておく必要があります。
- 売上=客数x客単価、客数=新規顧客+既存顧客ー流失顧客(中略)顧客数を増やすためには、「新規顧客を開拓」し、「既存顧客の来店頻度を増や」し、「顧客の流失を防ぐこと」が求められます。(中小機構「事例7回目 既存顧客をアップする」)
- 売上=客数x客単価、客単価=商品単価x買上点数(中略)「客単価」は以上の式からもわかるように、販売商品の「商品単価を上げ」「買上げ点数を上げる」ことにより増加します。(中小機構「事例8回目 顧客単価をアップする」)
- 売上は客数x客単価であり、さらに客数は「既存客」と「新規客」に、客単価は「注文単価」と「注文数」に分解できます。(日本政策金融公庫「売上アップにつながる写真の撮り方ガイド 飲食店編」p.5)
D社長は「売上の方程式」を意識していなかったので、「客数」や「客単価」のことも、「新規顧客」と「既存顧客」のことや、「商品単価」と「買上点数」のことも、意識しない経営をしてしまっていたのです。
これでは、売上や利益が伸びないのは、仕方なかったことでしょう。
経営の立て直しに必要な3つのポイント
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今回は以上です。